水のように、柳のように…
<安藤亘の1分間カウンセリング 7年7月>
Q.福祉系専門学校を卒業し、高齢者入所施設に勤め始めたばかり。入職して数か月なので、聞きながらでないと仕事を進めることができません。私なりに精一杯頑張っているつもりなのですが… 確かに、2年目の先輩のようにテキパキできません。1年しか違わなくても、現場ではその経験の差が物凄く大きくて、逆にいうと毎日学ぶ事がとても多いです。自分で考えて行動しなくては、とは思うのですが自信がなく、日々うつうつと過ごしています。休みの日も仕事が頭から離れず楽しめません。早く一人前になりたいです。
(Y子:22歳)
A. “辛くて仕事を辞めたい”というご相談かと思いましたが、最後に「早く一人前になりたい」と。ねばり強く前向きなY子さんの強みを感じました。
また相談内容をお伺いして、「水は争わない」という老子の『道徳経』に通じるY子さんのしなやかな姿勢を感じました。以下紹介します。
「水は善く万物を利して而も争わず 衆人の悪む所に処る 故に道に幾し」『老子』第八章より
水は低いところへ流れてとどまり、他と争わず、それでいてあらゆる生物に恵を施します。柔らかく、形を持たず、それでいてやがては岩をも穿つ力を持っています。
柔軟でねばり強いところは、木に例えると、硬くて強い大木ではなく、しなるけと折れない「竹」、さしずめ「柳」でしょうか。
さて、レジリエンス(resilience)という言葉をご存じでしょうか。跳ね返り、弾力、回復力、復元力という意味で、元々は「ストレス」と共に、物理学の分野の言葉でした。それが「さまざまな環境・状況でも適応し、生き延びる力」として使われるようになりました。
人に弱みは見せないで、自分の力だけで何とか乗り越えようとするタイプの人は、強いストレスがかかったときに心が折れてしまいがちです。
しかし、“柳に雪折れなし”という言葉もあるように、柳は大雪が降ってもしなやかに枝をしならせて雪を落とします。
揺れながら、しなりながら「何とかなるさ」「誰かに相談してみよう」という“しなやかさ”は、心が折れない強さになります。
福祉の仕事はマニュアル通りにやればすぐに誰にでもできる、そんな仕事ではありません。
Y子さんからすれば、完璧と思える職場の先輩や上司もまだ道半ば。福祉現場の仕事は、どこまでいっても完璧ということはありません。
Y子さん、もし何かに迷っていたり、心が乱れていたりする時には「水」を思い浮かべてみてください。水は逆らわず、自然の流れに身を委ねることの大切さを教えてくれます。
そして今回のように誰かに相談してみよう、という柔軟性(しなやかさ)がY子さんの強みです。
今抱えている「どうすれば」の気持ちを、今回このコーナーにご相談してくださったように、少しだけ勇気を出して身近で信頼できる人に話してみませんか?
Y子さんの成長する可能性は無限大。今後が楽しみです。