一緒に少しずつ前へ

<安藤亘の1分間カウンセリング 8年6月>
Q.障害者支援施設で就労支援の仕事をしています。仕事以外の相談でもよろしいでしょうか。現在、母子家庭で14歳のひとり娘(中2)がいます。昨年の夏休み明けから表情が乏しく登校をしぶるようになり、現在学校に行けていません。なかなか理由を教えてくれず、原因もわかりません。先日はじめて「死にたい気持ちになる時があって辛い」とSOSを出してくれました。すぐにメンタルクリニックを受診しましたが、医師も病気かどうか微妙とのことで、薬は処方されませんでした。これからどんなことに注意したら良いでしょうか。
(J美:42歳)
A. J美さん、日々お仕事と家事を続けながら、娘さんのことをずっと気にかけてこられたのですね。本当によく頑張っていらっしゃいます。
仕事をしていても、心のどこかにいつも娘さんのことがあって、知らず知らずのうちに精神的エネルギーを消耗しているのではないでしょうか。
「育て方が悪かったのでは」「父親がいないからでは」等と、自分を責めてしまう瞬間もあるかもしれません。でも、その必要はまったくありません。むしろ娘さんがSOSを出せたのは、お母さんへの深い信頼の証です。
「死にたい気持ちになる時があって辛い」と打ち明けてくれた娘さん。この言葉は、SNSや映像の影響で軽く出るものではなく、今の苦しさの表れでしょう。まずは「話してくれてありがとう」と受けとめてあげてください。すぐに解決しようとしなくて大丈夫。ただそばにいて孤立させないこと、それが今いちばんの支えになります。
最初は心配をかけまいとして言えなかったけれど、やっぱり大事なお母さんに辛さをわかってほしい、少しでも楽になりたい… そんな思いで相談しようと決心されたのだと思います。お母さん思いの娘さん、そしてしっかり信頼されているよき母だと思います。
「不登校」は“状態”であって、原因はひとつではありません。身体的なもの(朝のだるさなど)、精神的なもの(漠然とした不安など)、社会的なもの(友人関係や学校での出来事など)等々、さまざまな要因が複雑に絡み合っていることが多いです。
娘さんは14歳。善悪の判断もでき、自分なりに深く考えられる年齢です。だからこそ、原因探しよりも、ひとりの人として信頼してこれからのことを一緒に考える“ソリューション・フォーカス”の関わり方が有効です。
「なんで、どうして学校に行けないの?」といった過去ではなく、「これからどうしたい?」「どうなったら少し楽になりそう?」と未来に視点を向ける質問をしてみてください。それがソリューション・フォーカスの第一歩です。
過去のことはもう終わったこと。今後に生かすしかありません。そして、これから進む道を娘さんがひとりで真っ暗なトンネルを歩くのではなく、お母さんと一緒に歩むというスタンスです。
暗いトンネルの中でも、娘さんはJ美さんを選んで声をかけてくれました。それだけで、もう道は始まっています。
人生には、自分ではどうにもならない出来事が必ず起こります。先が見えず、不安になることもあります。むしろその連続かもしれません。
でも、うずくまって悩むよりも、歩きながら考える。そうすることができれば、その経験(過去)はこれからの未来に必ず生かすことができます。
今日より少しだけ前へ。その積み重ねが、いつか振り返った時に「あの時も意味があった」と思える日につながるのだと思います。
J美さんも娘さんも、そしてこの文章を読んでいる皆さんも。
心から応援しています。





