さりげない舵取りを

<安藤亘の1分間カウンセリング 7年12月>
Q.中規模の保育園の保育士8年目。私くらいの年代がほとんどおらず、若手とベテランのちょうど真ん中の立ち位置です。最近、ベテラン保育士が若手のミスを休憩室や事務室で話していたり「昔は良かった」と語ったりするのを聞くことが増えました。しかも私にも同意を求めるように「あなたもそう思うでしょ?」みたいに振ってくるので返答に困ります。若手の相談も受ける立場なので、板挟みになってしまい正直つらいです。
(D織・32歳)
A. D織さん、“真ん中”の立場がどれほどつらく苦しいものか、文面から伝わってきました。若手の不安もわかるし、ベテランの積み重ねてきた歴史もわかる。両方の言い分がわかるからこそ、板挟みに感じてしまうんですよね。
とはいえ、ちょうど中堅の位置にいるからこそできる、さりげない舵取りというものがあります。白でも黒でも、右でも左でもない。いわば“中道(ちゅうどう)”の立ち回りです。
ベテランから「あなたもそう思うでしょ?」と同意を求められたときは、賛否を示さず、視点を未来へそっと向ける返しが効果的です。
たとえば「なるほど、そう感じる場面もありますよね。こちらでは若手がこういうところで迷っている様子もあるので、どう育てていけるか一緒に考えたい」という感じです。相手を否定も肯定もしない、つまり相手の発言を受け止めつつ、話の矢印を“対立”ではなう”未来“に向けます。
ここでアドラー心理学にも通じる考え方を紹介します。「他人を変えることはできない。変えられるのは、相手と向き合うときの“自分の態度”だけである。」
この視点を持つと、板挟みの苦しさは少し軽く、そしてやわらぎます。誰かの愚痴を止めることはできなくても、愚痴の“流れ方”を変えることはできます。
若手から相談を受けたときも同じです。誰かを悪者にするのではなく「どうしたらお互いが動きやすくなるかな?」と関係性を前に進める問いかけ、つまり(未来に向けて)これからのことを一緒に考えよう、という視点です。それだけで若手の視野が広がり、視界が開けてくるでしょう。
孫子の兵法には、こんな思想があります。「戦わずして勝つとは、争いの条件そのものを整えること」
職場の人間関係もまさに同じです。賢者は「負け戦をしない」。しかもそもそも「勝ち負けのある戦い方をしない」。“勝ち負け”は結果、禍根を残すことになります。“どちらが正しいか”ではなく、“どうすれば争わずにすむ環境をつくれるか”が鍵です。
D織さんのような中堅の立場は、組織の温度をさりげなくと整える大切な役割を自然と担うことになります。しかしその経験は、必ずD織さんの大きな財産になりますし、後輩にも、ベテランにも、ひいては組織全体に良い波紋を広げる存在になっていきます。
どうか肩の力を抜いて、無理のないところから。そのやわらかな姿勢が、きっと職場全体の空気をゆっくりと変えていきます。
応援しています。





