優しさの「使い方」

<安藤亘の1分間カウンセリング 7年11月>
Q.高齢者入所施設の介護職員です。人からよく「優しい人」と言われますが、自分ではトラブルにならないように相手の顔色を見て、ただ立ち回っている、つまり“弱い”だけと思っています。私の悩みは注意されたり嫌味を言われたりしやすいこと。またその言葉に反応し過ぎて、ずるずる引きずってしまうことです。どうしたら一喜一憂せず、平静な心持ちでいられるでしょうか。
(C美・37歳)
A. ご相談ありがとうございます。まず「優しい人」と言われることと「弱い」と感じることは、必ずしも同じではありません。むしろ介護(福祉)現場では、相手の気持ちに敏感であることは大きな強みです。ただ、それが自分の心の負担になっているなら、優しさの“使い方”を調整する必要があります。以下、工夫点(改善に向けてのヒントやきっかけとなるようなこと)をお伝えしますね。
まずは「相手と“境界線”をつくる」こと。これを意識すればC美さんの土俵に相手を土足で踏み込ませることなく防ぐことができます。
人に頼まれごとをされやすいのは、あなたが「しっかりしていて頼りがいがある」「断らなそうに見える」からでは。
ここで大事なのは“優しさを保ったまま断る”ために、ワンクッション置くというシンプルなことを心がけてみましょう。例えば「声をかけてくれてありがとう。ただ、今は○○があって難しいの。」“ありがとう”と言われて嫌な気がする人はいないでしょう。
すぐにそのように言うのが難しければ、時間差の返事「ちょっと考えさせてね」と。そして「受けるか」「受けないか」の二者択一ではなく“第三の道”。相手を傷つけず、あなたの負担も減らします。そのうえで、相手の言葉を“そのまま受け取らない”心がけを。言われたひと言を長く引きずり、その場面を繰り返し再生してしまうと、自分の心の中で「意味」を過剰に付け足していることが多いです。
最後に“心を守る解釈のコツ”について。事実と解釈を分ける
・事実=相手がこう言った
・解釈=その言葉で自分はこう感じた
⇒ここを切り分けるだけで、感情の揺れが落ち
着きます。
他人の言葉は“相手都合”のことが多く、不安・怒り・体調・プレッシャー等が積み重なって出ずる“セカンダリー・エモーション(二次的感情)”がほとんどです。
本当に「強い人」とは揺れた時に戻るしなやかさ(レジリエンス)を持っている人。共感性が高く、人への気づかいが自然にできるC美さんは、すでに介護の仕事にとても向いています。
あとは心が揺れた時に戻る“自分なりのやり方”をいくつか持つだけでずいぶん楽になります。トイレに行って推しのアイドルの動画を観たり、深呼吸をしたり…
自分を大切にできてはじめてゆとりが生まれ、他者にもやさしくなれるはず。C美さんの“ありのままの自分”を大切にされてくださいね。





