本当の「自己肯定感」?
<安藤亘の1分間カウンセリング 7年6月>
Q.地元の高齢者施設に勤め始めて10年目。最近の私の悩みの種は、職場の後輩(新人職員:A子)です。今年度から入職したきたA子が言われたことや指示したことしかできません。ビクビク私の顔色を伺うA子は昔の自分を見ているようでイライラし、ついあたってしまいます。そんな自分が悪いのでしょうか。どうすれば心の平安は…
(X美:32歳)
A. ご相談ありがとうございます。32歳で現場経験10年目、ということは本当に現場叩き上げですね。いろいろとご苦労もあったことでしょう。これまで頑張ってきたX美さんに、福祉現場に係る身として、感謝いたします。
ではX美さんの心の平安のために、少し視点を変えるコツやきっかけとなるようなお話をさせていただきます。
「指示したことしかしない」と言われますが、もしそのA子さんが先輩や上司が指示しないことを自分で勝手に判断し、何でもかんでもやりだしたら大変なことになります。
物事には順序・段階があります。指示したことしか“しない”のではなく“できない”。まだ全体が見えていないのでは。1年の流れ、1日の流れ、他の職員との連携の仕方やタイミング。
しかも福祉の仕事は、どこまでいっても完璧はありえない奥深い仕事。習うより(時間をかけて)慣れるしかないのではないでしょうか。
そして、中国春秋時代における哲学者老子は次のように言っています。
天下みな美の美たるを知る、これ悪のみ。みな善の善たるを知る、これ不善のみ。有と無はあい生じ、難と易はあい成り、長と短はあい形し、高と下はあい傾き、音と声はあい和し、前と後ろはあい随う
『道徳経』
つまり、人が「美しい」と認識するものは、同時に「醜い」という概念を生む。「善」と「悪」、「有」と「無」、「難」と「易」、「長(所)」と「短(所)」、「正(常)」と「異(常)」、「自(分)」と「他(者)」。全てのものには相対する側面があり、その両方がそろって初めて、世界のバランスが取れているという思想です。
X美さんが、もっと楽しく仕事をするためには何が必要でしょう?二者択一ではなく、その中間「第三の道」を目指す。自分にとっても相手にとっても心地よい人間関係。
人間は未熟な存在です。短所も長所も等身大の自分を受け入れることができるのが本当の「自己肯定感」なのかもしれません。正しい自己肯定感を受け入れられれば自分にも相手にもやさしくなれるはず。そんなあり方から“心の平安”が生まれるのかもしれません。
「I am OK」「You are OK」。まずはX美さんが、自分にやさしくなれますように。