今という「瞬間」を
<安藤亘の1分間カウンセリング 7年3月>
Q.地元の福祉系大学を卒業後、一旦は営業の仕事に就きましたが、その後福祉現場に転職し、現在特別養護老人ホームでデイサービス部門の生活相談員をしています。現在妻と子どもふたりの4人家族。福祉現場経験は今年でちょうど20年目になります。“まだまだ若い”と思いつつも、信頼していた上司や先輩方が次々と定年退職され、最近はふと先のことを考えて不安になります。今後の自分自身の心持(こころもち)をどのようにしたらよいでしょうか。
(U治:49歳)
A.現場経験20年。これまで日々、仕事もプライベートもいろいろなことがあったでしょう。特に駆け出しの頃は、本当に毎日覚えることや新しく体験することが多く、心身共に格闘の毎日だったのでは。
今は折り返し地点。山登りでは、ちょうど山頂に差し掛かったところでしょうか。仕事も家庭も少しゆとりができ「来し方行く末」を眺め、考える時なのかもしれませんね。
これまで、おそらく思い出したくない出来事や失敗談も、あまたあったことでしょう。子育ても仕事も、いいことばかりではありません。むしろ苦労や後悔の方が多いのでは。
人は自分自身のことを振り返る際、ネガティブなことを考える傾向があります。過去を振り返る時も先のこと(未来)を考える時も意図的に「肯定感」がもてるような事柄に意識を向けましょう。失敗もフレーム(視点や見方)を変えると、そこから学んだことやプラス要因は必ずあるはず。
U治さん、人生は誰にとってもあっという間。そして“今(この瞬間)”の連続です。そのかけがえのない人生を、この時代、この国に生まれた同士として、お互いに今という“瞬間”を楽しみながら生きていきましょう。
ローマの偉人(哲学者)セネカは『心について』の中で次のように言っています。「どうすれば心を平静に保てるか。それは、自分自身を愛し、今の状態を喜んで眺め、しかもこの“よろこび”を中断することなく、常に静かな状況に留まり、決して自分を高めも低めもしない、ということである。」と。また、また中国の偉人(哲学者)老子は『老子』第十章で「迷える魂を落ち着かせ、統一を保って、そこから離れないようにできるか。息をこらし、心を開いて嬰児のようにできるか」と。
つまり、全く異なる時代・地域に生きた偉人たちは「過去のことを考えてくよくよしたり、先(不確定な未来)のことを考えて不安になったり、さらに人と自分を比較したりする中には“心の平安”“はありえない。今この瞬間を楽しんで(日常の些細な事に幸せを感じながら)生きよ」ということでしょう。
職業人として、夫として、父として懸命に生きてこられたU治さん、U治さんが幸せになって不幸になる人はひとりもいません。自分にやさしく、そして日々“全力で楽しむ”努力を怠りなく。
陰ながら応援しております。