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VOL.225
2023. 11月24日

WAIWAIBOX

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我慢するのではなく…

イラスト

ビヨンドザボーダー(株)/メンタルヘルス講習会専任講師
社会福祉士・精神保健福祉士 安藤 亘

<安藤亘の1分間カウンセリング 5年11月>

Q.全く異なる領域(営業職)から現在の障害者支援施設(通所型)へ転職し、かれこれ7年目になります。以前の職場ではノルマもきつく、上司からのパワハラも多かったです。人手不足なのは今の職場も同じですが、上司も良い人ばかりで福祉の仕事にはとてもやりがいを感じています。今回相談させていただきたいのは、ご利用者のご家族からの罵詈雑言についてです。主に通所部門のご利用者のご家族なのですが、「家族は24時間本人の面倒をみている。職員は給与をもらっているんだから、休みもなくて当たり前」「もっとこうしろ、ああしろ」と強い物言い。ほとんどのご家族は「いつも、ありがとうございます」と言ってくださいますが、(少数ですが)一部のご家族は一生懸命頑張っているのに、苦情や要求ばかり。正直辛く感じることも…
(E夫:40歳)

A.E夫さん、ご相談ありがとうございます。ひとりで抱えず誰かに相談するというのは、自分自身の心を守るために何より大切なことです。

 さて今回はストレスマネジメントという切り口ではなく、別の角度から拝見いたしましょう。前職のようにパワハラはなくなったが、お客様(ご利用者やその家族)からの物言いがキツイ、ということですね。

 カスタマーハラスメント(略称:カスハラ)という言葉を聞いたことはございますか。この度のご相談内容は、最近話題の「カスハラ」の問題として職場できちんと向き合っていかないといけない事案と思います。

 厚生労働省の報告からも、ここ数年メンタルヘルス不全による労災申請(請求・支給決定件数)が、業種別にみると「福祉」現場の職員がダントツに多かったことがわかっています。

 しかも、最近はハラスメントと認識しにくい案件が増えていて、そのため2023年(令和5年)10月に、国はハラスメント事案による労災認定基準の見直しを以下のように行いました。


【業務による心理的負荷評価表の見直し】
●具体的出来事「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)を追加
●具体的出来事「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」を追加
●心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例を拡充(パワーハラスメントの6類型すべての具体例の明記等)

【精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し】
●悪化前おおむね6か月以内に「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により悪化したときには、悪化した部分について業務起因性を認める

【医学意見の収集方法を効率化】
●専門医3名の合議により決定していた事案について、特に困難なものを除き1名の意見で決定できるよう変更

※出所:厚生労働省「心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正しました」


 こうしたことから(福祉という業種であっても)、ご利用者や家族からの要求内容または要求態度が社会通念に照らして著しく不相当であるクレーム等迷惑行為に対し、ただ単に現場職員が我慢する時代ではなく、いよいよ組織として守っていく必要のある事案になりました。

 仕事は契約ですから、当然顧客(ご利用者やその家族)であっても、利用にあたってのルールは必ずあります。お互いに、気持ちよくサービスを提供したり受けたりするために。

 自分の中に留めず、組織的対応が必要な問題として、E夫さんの所属する組織で取り上げていただくよう、管理的立場の方に働きかけてみてください。おそらくE夫さんと同じような悩みを抱えている職員の方はたくさんいらっしゃると思います。

 E夫さんが、今後も「とてもやりがいを感じる仕事」として、心身の健康を守り長く務めることは、E夫さんのためだけではなく、職場にとってもとても大切なことです。遠慮しても損です。今後もよい仕事を展開していくことができるよう、周囲に働きかけ、組織の仕組みとして職員一人ひとりを守っていただきましょう。心から応援しております。

ソウェルクラブ秋田事務局

広報「ひろがれソウェル秋田」 vol.225
発行日:2023年11月24日
発行:ソウェルクラブ秋田事務局
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