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VOL.223
2023. 9月29日

WAIWAIBOX

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2つのキーワード

イラスト

ビヨンドザボーダー(株)/メンタルヘルス講習会専任講師
社会福祉士・精神保健福祉士 安藤 亘

<安藤亘の1分間カウンセリング 5年9月>

Q.福祉系専門学校を卒業後、私はこれまで、ある特別養護老人ホームで介護職員として働いてきました。途中、子どもが生まれ子育て(2人)のため10年ほど仕事から遠ざかり、専業主婦として家族のために尽くしてきましたが、下の子が小学校に上がるのをきっかけに、かつて働いていた職場に戻ってちょうど10年経ちました。最近実家で父が亡くなり、そのショックで食欲も落ち、仕事に行っても以前のように楽しくありません。心も身体もボロボロです。
(C香:49歳)

A.C香さん、ご相談ありがとうございます。今のC香さんの状態は、全然不思議なことではなくて、むしろ自然なこと(必然)。おそらくこの世に生まれてきたほとんどの方が、経験することなのではないでしょうか。

 身近な人が亡くなると、心身共にかなりダメージを受けます。自分の体の一部がなくなったかのような喪失体験を経験することになります。しかもそうしたこと(人生の転機)が重なりやすい時期というのがあって、昔の人は厄年(前厄・本厄・後厄)等といいました。

 そういう時こそ「自分を大切に」。ひとつ目のキーワードです。状況にあがいたり、抗ったりすればするほど、さらなる試練を呼び込むことに。そのため、現状を必然なこととして受け入れ、プライベートはできるだけスローペースに。

 家事は手を抜き、食事はゆっくり季節のものを食べ、お風呂もいつもよりもゆっくり入れるように、家族に手伝ってもらいましょう。また、仕事でミスも生じやすい時期。職場でも上司や同僚に今の状況を説明して、理解が得られるようにしておきましょう。

 つまり、ひとりで抱え込まず家庭や職場の理解を得る、協力してもらうということ。ただそうは言ってもC香さんのように、普段人のために尽くしてきた人は、なかなか人の支援を受けることをよしとせず、素直にお願いしたり、素直に協力してもらったりすることが苦手な傾向にあります。

 C香さんは、ご自分の家族や職場で調子を崩した方がいたら、どうされますか。おそらく、よろこんで力になり、当然のごとく何かと気遣いし、お手伝いされるのではないでしょうか。

 そして「どんなに辛いことがあっても、時間が何とかしてくれる」といいます。では実際に時間が経つことで何がどのように変化するのでしょう。

 ふたつ目のキーワードは「主観から客観へ」。人間にとって不快な感情「不安」や「怒り」、そして喪失体験に付随する「深い悲しみ」が“主観”。それらの感情をひとりで抱え込み、自らの中に留めていれば(最終的には時間が何とかしてくれるかもしれませんが)なかなか心が整わず、日常を取り戻すのにかなり時間がかかってしまいます。

 しかし、それを身近な信頼できる人に相談することができれば「主観」が「客観」へ切り替わっていき、心が整っていきます。

 「自分を大切に」そして「主観から客観へ」。そのために必要なことは、もうおわかりですね。C香さんは、これまで人のために尽くしてこられた人生を歩んで来られたと思います。これからは、周囲の人の力を借りていくことが、C香さんの人生をさらに豊かにします。応援しています。



ソウェルクラブ秋田事務局

広報「ひろがれソウェル秋田」 vol.223
発行日:2023年9月29日
発行:ソウェルクラブ秋田事務局
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