共通点は「相手に求めず」
<安藤亘の1分間カウンセリング 5年2月>
Q.私は大規模社会福祉法人に入職し、今年で19年目。現在は障害者支援施設の係長です。
職歴が長くなると、それなりに職責も重くなってくるのですが、私は部門をまたいで横断的に行う職員研修委員会の委員長も務めています。
先日アンガーコントロールの研修を行うことになり、事前に参加者へアンケートをとってみました。すると、男女の差がはっきりした内容の結果となりました。最近では男女の区別や役割等の決めつけは慎まないといけませんが、それにしても極端な結果に驚いています。簡単に申しますと、男性は施設内のルール(規律)を守らないご利用者に対して怒りを感じ、女性は休憩が終わっても時間通りにフロアに戻ってこなかったり、勤務時間中に職員同士で私語が多かったりする同性の同僚に対して怒りを感じていました。結果からわかること、今後の施設運営に役立つことはあるでしょうか。
(V子:44歳)
A.V子さん、面白いご質問ですね。誤解を恐れず申し上げますが、私のこれまでの現場経験と長年の相談内容を振り返りますと、V子さんの指摘による傾向は多分にあると実感しています。
男性は規律を、女性は同調(一緒感)を一般に求める傾向があるのかもしれませんね。
少し話を広げますが、日本における自殺者は、昨年も21,000人を超えました。統計史上最も多かったのが2003年(34,427人)で、毎年自殺者の約7割が男性です。
人口規模が異なりますので、人口10万人あたりの自殺者の数で比較しますと、日本は世界的にもかなり高い水準にあり、G7(先進7カ国首脳会議)では、断トツトップを走っている状況です。
また、2021年度の労災補償状況に関する調査結果(厚労省)によりますと、精神障害に関する事案(脳・心臓疾患に関する事案を除く)の労災補償状況ですが、請求件数は2,346件(前年度:295件の増加)、支給決定件数は629件(前年度比21件の増加)となっています。
業種別の大分類では、請求件数は「医療、福祉」577件、「製造業」352件、「卸売業、小売業」304件の順で多く、支給決定件数も「医療、福祉」142件、「製造業」106件、「卸売業、小売業」76件の順に多い結果となっています。
業種別の中分類では、大分類の「医療、福祉」のうち「社会保険・社会福祉・介護事業」による請求件数336件、支給決定件数82件と最多となっています。
つまり日本の福祉現場に従事されている職員の皆さまは、メンタルリスクの高い国の、メンタルリスクの高い業種で日々働いているわけで、かなり意識した特別な対応が必要です。
V子さん、男性は「こうでなければならない」という規律(自分に対する厳しさ)を少し緩めて(相手に求めず)、抱え込まず愚痴や弱音を吐きながら、時に同僚と同調したりして柔軟に働く、女性は同調(一緒感)を相手に求めず、自分がポジティブに人とつながる際にそうした共感(共に在る感覚)を活用することが必要なのかもしれませんね。
今回はV子さんの職場での「気づき」から話題が広がりました。V子さんは中間管理職ですから、上からも下からも期待され、それぞれの要求に応えようと日々心身共にすり減らしているのではないでしょうか。
自分、家族、周囲(職場の上司・部下、ご利用者・そのご家族)のために、まずはV子さんが自分を大切にするところから。V子さんが幸せになって不幸になる人は一人もいません。そのためには、時に嫌われる勇気も必要なのかもしれませんね。応援しています。