ストレスを生み出しにくい職場に
<安藤亘の1分間カウンセリング 5年1月>
Q.高齢、障害、保育の施設を運営する法人の、高齢者部門に勤務しています。法人の部門をまたいだ横断的な衛生委員会があり、私は次年度からメンバーのひとりになることが決まっています。委員会では、部門ごとのストレスチェックの結果や残業時間の管理を検討するのが目的のようですが、現委員に聞くと報告だけで機能しておらず、形骸化している様子。私は委員として時間を割くからには、職員が精神衛生を保つために職場としてどのような配慮が必要か考えたいと思っていますが、具体案や意見が全く浮かばず…。どうしたら実現できるでしょうか。
(U美:35歳)
A. U美さん、前向きなご相談ありがとうございます。貴重な時間を割くからには、ぜひ目的をもって主体的に参加したいですよね。
私は仕事柄、アンケートで福祉現場の方に仕事(職場)についてお伺いすることがあります。多くが「仕事量が多い」「勤務時間が長い」「休みがとりにくい」「給与を上げて欲しい」といったご意見。しかし、すぐに給与を上げたり人を増やしたりすることは難しいでしょう。
まずは職場に専門家を招いてメンタルヘルスに関する研修会を行うことが効果的であることは言うまでもありません。職場の中にメンタルヘルスに関する共通理解・言語ができますから。職員個人としてはストレス対処の方法の基本を身につけ、組織としては職場のコミュニケーションに工夫と意識を向けることで、「メンタル」という言葉に対する抵抗感も少なくなるでしょう。
研修をすぐ実施するのは難しいということもあるでしょう。以下、職員一人ひとりの心掛けですぐできそうなことをお話しさせて頂きます。
まず「心」の疲れについて。心の疲れには「短期的疲れ」と、「長期的疲れ」があります。
短期的疲れは軽い運動(一日15分×2回のウォーキング)と週末睡眠を多くとる等で何とかしのげますが、長期的疲れ(年単位の疲れ)は、比較的連続した長い休みが必要です。年末年始、ゴールデンウィーク、夏季休暇等はぶつ切りにせず、できるだけ連続してまとめて取れるよう、職場で工夫してみてください。
休みを取りやすくするため、年度初めに年休を取りづらい職歴が浅い職員から職場のカレンダーを回して有休を入れていくように工夫している現場もあります。
また職場に孤立した人をつくらない。普段と違った様子に気づいたらさりげなく声掛けし合える風通しの良い(仕事以外のちょっとしたコミュニケーションが豊富な)職場の雰囲気を醸成していかれてください。
福祉現場の方は日々手を抜くことができない仕事をされているので、対職員、対ご利用者とのやり取りのなかで職場ではできるだけ「ネガティブ・ワード」を使わない。「ポジティブ・ワード」に変換してコミュニケーションを図るよう一人ひとりの職員が心掛けるようにしましょう。
そして「何でいつもそうなの!」「何度言えばわかるの!」という過去の出来事を咎めるコミュニケーションではなく、「どうしたらできるようになるか一緒に考えよう」(ソリューションフォーカスと言います)という未来志向のコミュニケーションを意識します。
まずはU美さんが、衛生委員会で具体的に提案してみてください。職場で取り組むようになれば職場全体の空気感が徐々に明るく、ストレスを生み出しにくい職場になるでしょう。自分のため、職場の皆のため、ご利用者のためにも、U美さんの一歩踏み出す勇気を応援しています。