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VOL.210
2022. 8月26日

WAIWAIBOX

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高い?低い?

イラスト

ビヨンドザボーダー(株)/メンタルヘルス講習会専任講師
社会福祉士・精神保健福祉士 安藤 亘

<安藤亘の1分間カウンセリング 4年8月>

Q.福祉系の専門学校を卒業し、今年4月から保育園と障害者支援施設を運営する法人で、高齢者介護の仕事をしています。
 私は小さい頃から人見知りで、基本的にネガティブ(マイナス)思考です。福祉現場では周りの人たち(同僚や先輩、上司、ご利用者)は、こんな私に優しく接してくれます。でも、自己肯定感が低くて自信がもてません。
 どうすれば、自己肯定感を高めて生きやすくなれるでしょうか。
(P子:30歳)

A.率直なご相談ありがとうございます。人に自分のことを相談するということそのものが、かなり勇気がいることだと思います。

 なるほど。内容的には福祉現場の職員の方の相談をお受けしていると、かなり多く寄せられる相談内容です。「何か自分に自信が持てない」と。

 さて、少し気になったのは「自己肯定感が低い」という表現です。30年くらい前に「自己啓発セミナー」や「自己肯定感を高める研修」がとても流行りました。そして「自己肯定感を高める研修」はここ最近、再び流行ってきています。

 しかし“自己肯定感を高める”という認識は、正しい認識ではありません。

 たとえば「キャリア」。よく“キャリア・アップ”とか言いますが、そもそも“キャリア”にはアップもダウンもありません。職業に貴賤はなく、どのような経験をしたとしても、積み重ねていくもの。

 「自己肯定感」も同じです。高いも低いもありません。自分の長所をどんどん見つければ自己肯定感が上がるのでしょうか。そのようにして自分の長所を過大評価し人と比較していれば、いずれ他者を低く見ることによって、自己を肯定するようになるでしょう。

 しかし、人との比較によって優劣をつけていれば、心の安住の地(安定)は得られません。結局“人と比較して自分が偉い(人より優れている)”と感じている人も、“自分は人より劣っている(自信がない)”と感じている人も同じこと。人との比較で自分の価値を捉えようとしているのですから。

 「自己肯定感」の正しい認識は“自分の長所も短所も等身大の自分を受けて止める”ということ。それが本質です。人との比較をやめ、ありのままの自分を受けとめた時、はじめて自分(の存在)をいとおしいと思えるのです。

 これができれば相手の短所を見つけても、それだけで相手を否定したり、嫌いになったりする必要はなく、“それは相手の一部。全体ではない。人はすべて多面的な存在。自分にも短所はあるし。私の短所もあっていい。でも、全体の一部分”と他者に対しての寛容さや許容範囲、つまり自分自身の心の世界が広がるでしょう。

 そして正しい「自己肯定感」の認識は、正しい「自己理解」を深めることにつながっていきます。自分の多面性を受け止めることができれば、他者の多面的な部分を受けとめることもできるはず。

 親や学校の先生、上司等、周囲の評価によって序列化されてきた現代人は、結構難しいかもしれませんが、比較をやめることを常に意識してみましょう。

 P子さん、自分で自分にレッテルを貼り“私は小さい頃からこんな感じです”と決めつけ、将来の変化の可能性を狭めることはなさらず、今日から自分の可能性を信じてみませんか。P子さんは多面的な存在で、その可能性(伸びしろ)は無限大なのですから。応援しております。

ソウェルクラブ秋田事務局

広報「ひろがれソウェル秋田」 vol.210
発行日:2022年8月26日
発行:ソウェルクラブ秋田事務局
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