持ちつ持たれつ、お互いさま
<安藤亘の1分間カウンセリング 4年1月>
Q.障害者支援施設の入所部門でフロアリーダーをしています。現場経験も、早10年。あっという間です。
フロアリーダーという役割もあると思いますが、性格上よく同僚や後輩の相談を受けることが多く、これまでも相談者からかなり精神的に依存されることがありました。最近、本人の主体性や自立のチャンスを削いでいるような気がして、私自身自分を変えないといけないのではないか、と。アドバイスをお願いします。
(J男:37歳)
A.まっとうなご相談ですね。悩みどころであると思います。
まずはJ男さんがこれまでされてこられたことは正しいことだと思います。しっかりと身近な人の話に耳を傾けて話を聞いて受け止めることは、誰しも大切なことだとはわかっていても、それがなかなか難しい。福祉の現場職員であればなおのこと、日々ご利用者やそのご家族のサポート、そして自分自身のことで精いっぱいで、職場の同僚や後輩にまでエネルギーを割くことができない人がほとんどではないでしょうか。
この忙しい現代社会においては、誰かにじっくり話を聞いてもらうということ自体がものすごく貴重なこと。
人の話を真剣に聞くには、かなり“聞き手”の精神的エネルギーを要します。あまり依存させないくらいの適度な距離の取り方は必要でしょう。そして時に(自分で抱え込まず)専門家につなぐことも必要かもしれませんね。
J男さんは現場経験、10年という時間をかけてご利用者やご家族、職場の同僚と向き合いつつ、本当の自立とは何か、その本質を追求されてきました。そしてそれ故に「本人の主体性や自立のチャンスを削いでいるような気がして…」と考えるようになられたのだと感じました。
では、あらためて「自立」とは何でしょう?国語辞典には「自立」の反対は「依存」と書かれてありますが、自立の反対は依存ではなく「孤立」なのではないでしょうか。人はひとりでは生きていけません。また、何ものにも依存しないで生きていくことは決してありえません。人は心を許せる身近な人との関係の中で互いに信頼し、適度に依存しあえる関係こそ、むしろ本当に自立している状態であると思うのです。
暖かく見守り「相手(相談者)が自立するのを待つ」ことも時には必要でしょう。しかし職場で孤立している職員がいたら、やはりその人の気持ちを受けとめ、孤立させないことはもっと大切なことです。そしてそれにはJ男さんもひとりで抱え込まずにJ男さん自身、相談できる人が職場の内外に複数いることが肝要です。
持ちつ持たれつ、お互いさま。それが健全な依存、つまり自立です。「聞き手」に徹するだけでなく、時にJ男さんにも「話し手」になって、人に悩みを打ち明けてくださいね。人間ですから。
応援しています。