迷ったら、まず…
<安藤亘の1分間カウンセリング 3年8月>
Q.短大卒業後、地元の小さな会社の経理事務をしていました。間もなく結婚し子どもが生まれ、しばらくは家事に専念。いわゆる専業主婦に。下の子が小学生になるのをきっかけに、子育て中に取得したホームヘルパーの資格を活かしてある社会福祉法人に就職。在宅高齢者のホームヘルプサービスの仕事に就きました。日々やりがいは感じますが、妻として、母として、そして職業人としての自分で精いっぱい。いつも自分が後回しで、自分の時間がまったくなくなりました。最近心身ともにすっきりせず、辛いです…。
(E子:45歳)
A.もし私が「E子さん、わかります」と言ったらどんな気持ちになるでしょうか。そんなに安易にわかったつもりになってほしくないというのが本音なのでは。
「人(相手)を理解する」という言葉は、福祉現場でよく使われる言葉ですが、そもそも人を完全に理解することはできません。
“受容・共感・傾聴”という言葉は福祉現場以外でも(対人支援の仕事をされる方であれば)しばしば耳にする言葉ですが、それは“技法(テクニック)”ではありません。
相手を理解することはできないことを前提に、だからこそ相手に関心をもって、少しでも理解したい、近づきたいという心持ちで関わる“姿勢”こそが受容であり、共感であり、傾聴です。
さて、E子さんは「妻」「母」「職業人」として頑張ってきました。でも、その真ん中にあるのは一人の人間としての自分自身。自分をないがしろにして周囲のために尽くしても限界があり、結果燃え尽きてしまいます。
やはり「妻・母・職業人」としての資本(原資)は、それら役割ではなく一人の人間(個人)としての「自分自身」そのものなのですから。
まずは自分の心の声に耳を傾け傾聴し、完璧ではない不完全な自分を受容し、今の自分(長所も短所もある“ありのままの自分”)に共感し、大切にしてください。
人生には、何度か転機(いろんな課題が重なりやすい時期)が訪れます。昔の人はそれを「厄年」と言いました。しかしピンチはチャンス。転機はむしろ生かすためにあるもの。その転機を自分の成長の好機としてみてください。
何事も一人で抱え込まず誰かに相談することで、自分の狭い「主観」が「客観」に切りかわり(状況そのものは変わらなくても)ストレスの受け止め方が変わって気持ちが前向きになります。
E子さんのような他者のために尽くすタイプの方は“迷ったら、まず自分を優先すべし”というのが原則です。自分の時間を大切に。ゆっくりお風呂に入り、季節のものを食べ、時に自分にご褒美を。
E子さんの今後を応援しています。