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VOL.176
2019. 10月25日

WAIWAIBOX

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「力づける」「力を奪う」の境界は

イラスト

ビヨンドザボーダー(株)/メンタルヘルス講習会専任講師
社会福祉士・精神保健福祉士 安藤 亘

<安藤亘の1分間カウンセリング 1年10月>

Q.民間の保育園に勤めています。質問は「保護者への対応の範囲」について。子どものイヤイヤ期に振り回されてしまう保護者がいます。園の中で保護者が困っているときには対応していますが、園を出てしばらくするとまた子どもがイヤイヤで大泣き。どこまで介入するか悩みます。また、保護者の子育ての悩みを聞くことも多いのですが、延々と話し続けるお母さんも。話を切り上げるタイミングはどう見極めれば良いでしょうか。
(I子:25歳)

A.「どこまでが仕事(支援)の範囲なのか」というご質問ですね。明確なマニュアルがあれば良いのですが、対人支援の仕事には、そのようなものはありません。日々すべてが応用問題です。

 今回のご質問であれば、聞き方次第で、お母さんを依存的にも主体的にも変えていくことが可能です。先生としてすべて聞かれたことに対して答えるということは、相手をできない人にしてしまう可能性も。

 迷っていることに代わりに判断してあげたり、困っていることに介入し解決してあげたりしているうちに、その先生に判断していただかなくては何も決められない人にしてしまう(先生は“なくてならない人”になってしまう)可能性も。

 一方、起こった出来事に対してお母さん自身はどうしようと思うのかを聞いたうえで、きちんと後押しすることができれば次第に自分で判断したり自分で自分の気持ちを整理したりする力が育つのではないでしょうか。力づけるのも、力を奪うのも、また専門職である私たち自身です。

 例えば親子関係。子供は勝手に成長していくわけではありません。子どもが成長していく過程で、親も悩み苦しみ悶えながら成長していかないと、子どもは成長していきません。

 どちらか一方だけが成長していくということはあり得ません。そして、それは夫婦関係も同じこと。

 対人支援において、相手を「支援する(力づける)」のも、「権利侵害(虐待する:力を奪う)」のも紙一重です。

 ぜひ成長するチャンスを奪わず、成長を信じることのできる職員として成長し続けていってくださいね。I子さんの成長を応援しています。



ソウェルクラブ秋田事務局

広報「ひろがれソウェル秋田」 vol.176
発行日:2019年10月25日
発行:ソウェルクラブ秋田事務局
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