「傍観者」から「主体者」へ
<安藤亘の1分間カウンセリング 30年11月>
Q.高齢者入所施設で働いています。私には男性職員の後輩(新入職員2名)がいて、一人(A氏)は愛想も要領よく上司に好かれています。もう一人(B氏)は世渡り下手というか、損をするタイプで同じことをしていても、B氏だけ上司から叱られたり、ミスがあるとB氏がしたと決めつけられ、大きな声で攻撃されたりしています。これはパワハラです。どうしたらよいでしょうか。
(W男:29歳)
A.「責任」という言葉の本当の意味を知っていますか。英語にすると「What I can do now.」(今、私にできることは何なのか)となります。
W男さんが相談してくださった場面は、おそらく日常茶飯事となっているのでしょう。
職場の「いじめ」の構造は「いじめる側」の人、「いじめられる側」の人、そして多数の「傍観者」によって成り立っています。
では、W男さんが今できることって、何でしょうか。
例えば上司に正面から物申す(咎めたり指摘したりする)感じではなく、少し軽い感じで「〇〇さん、あまり厳しすぎるとハラスメントになっちゃいますよ」と、ちょっと斜めから合いの手を入れてみることは難しいでしょうか。
そうした言い方をすることさえも難しい雰囲気の上司もいることでしょう。また上司に悪く思われたくない、自分が標的になるのは…等々、その場では直接B氏を救うことが困難に思える場面もあると思います。
では、他にできることはないでしょうか。その上司のいない席でB氏に「あの人ってちょっと言い方きついんだよね。でも君のことを一人前にしようとあせっているのかも」とか「まあ、聞き流した方が良いよ。あの人いつもあんな感じだから」「これでも丸くなった方だよ。昔はもっと怒鳴り散らす人だったよ」等々、B氏の受け止め方を変える手助けをすることもできるかもしれません。
また、時間をとって上司に、最近B氏が元気がないので気になっている。この前研修に行って聞いた職場のメンタルヘルス不全の事例に似ていて、メンタルヘルス不全になる直前なのではないか、と心配そうに伝えるのも良いかもしれません。
職場で立場の弱い人が生きいきと働いているかどうかだけを見れば、組織全体の健康状態がわかるといいます。
誰にとっても働きやすい健全な職場環境の実現は、トップダウンではなく、ボトムアップ。つまり一人ひとりの職員が「傍観者」ではなく「主体者」として今自分にできることは何なのかを真剣に考えるところから始まります。
W男さんの一歩を踏み出す勇気、応援しています。