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VOL.160
2018. 6月29日

WAIWAIBOX

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1人ではなく、みんなで

イラスト

ビヨンドザボーダー(株)/メンタルヘルス講習会専任講師
社会福祉士・精神保健福祉士 安藤 亘

<安藤亘の1分間カウンセリング 30年 6月>

Q.ある法人の福士系の専門学校を卒業してから現在に至るまで、ずっと今の社会福祉法人の高齢者入所施設部門の職員として働いています。長く勤務している職員は数名で、その他職員は20代〜30代前半です。現場は人の流動が激しく、時間をかけて育てた後輩たちも結婚や出産を機に、職場を離れていきました。業界的には給与もさほど高くないのは仕方がないですが、せめて子育てしやすい(休暇を取りやすい)等、若い女性が働きやすい環境が整わないものでしょうか。
(Q子:40歳)

A. ご利用者のみならず、職員の方ともこれまで数えきれないほどの出会いと別れがあったことでしょう。その都度、折れそうな気持ちを立て直し、Q子さんはひたむきに仕事と向き合ってきました。ご利用者のため、職場のために頑張ってこられた様子が文面から滲み出ていて、胸が痛くなりました。

 人材の流動性や定着のしにくさといった今の福祉現場の課題、これはもう個人の努力をはるかに超える課題といえるでしょう。

 福祉は「つながりの再構築」が期待されていますが、国も「福祉」に甘え、期待し過ぎていますよね。

 福祉が激しく先の見えない時代と言われて久しいですが、一つだけ確実に予想できる未来があります。それは人口問題。高齢化社会だけは随分前から予想可能な未来の姿でした。

 確実にわかっていたことですが、家族の世話に任され、制度やサービスが後手後手になり、対応に遅れてきたのが今の日本。

 究極に核家族化した今の日本社会では、家族の中で誰かが何らかのリスクを負うと、もう余力がありません。

 福祉現場の職員の方は、ほぼ100%に近い方が人材難で若い人が定着しないことを憂いています。

 では、どうしたら良いか。これは、職場全体で真剣に考えていくテーマではないでしょうか。

 「1+1=2」ですが、職場の人間関係が悪ければ「1.2」や「1.3」になってしまいます。「1+1」を「3」や「4」にしていくためには、ひとりで抱え込まず職員同士が自分のこととして「今自分にできることは何か」を真剣に考えることが肝要です。

 今の日本では個人の力が弱く、ひとりで声高に訴えても相手にされません。同じ思いの方はたくさんいるはず。職場全体の問題としてじっくり腰を据えて話し合い、時間をかけて取り組んでみられては。

 はじめは小さなうねりかもしれませんが、それが職場全体、関係機関、地域社会、国へと広がって、大きなうねりとなるかもしれません。

 Q子さんに過剰な期待をかけてしまってはいけませんね。でもQ子さんが、ひとりでなく職場の皆と一緒に小さな一歩を踏み出す勇気を、応援しています。

ソウェルクラブ秋田事務局

広報「ひろがれソウェル秋田」 vol.160
発行日:2018年6月29日
発行:ソウェルクラブ秋田事務局
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