自分の「ことば」で
<安藤亘の1分間カウンセリング 30年 3月>
Q.高校卒業後、福士系の専門学校を卒業し、ある特別養護老人ホームに就職して11年が経ちます。職歴的には、かなり長い方です。
私の悩みは、今の若手についてです。私が新人の頃は、先輩の背中を見て仕事を覚えるのが普通で、必死でした。最近若手の職員の多くは指示したことだけやって、それ以外のことまで気がまわりません。先日、忙しい中若い職員に業務の手順を説明したところ、先輩の説明は難しくて分かりにくいと言われてしまいました。
(О実:34歳)
A. 今の日本は少子化に伴って手をかけられて育ってきた人がたくさんいます。また、Facebookやツイッター等SNSの影響もあって、学生時代は面倒な人間関係を避けることも可能です。そのため、人間関係の荒波にもまれないまま学校を卒業し、就職する方がほとんどでしょう。
社会に出れば同僚や上司は選べませんし、お客様(ご利用者やそのご家族)も選べません。複雑に絡み合った人間関係の中にいきなり飛び込みことになります。
そのため、人との距離感やコミュニケーション能力を、仕事を通じて急速に身につけていかないといけないのが今の社会の特徴です。
むずかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをおもしろく
おもしろいことをまじめに
まじめなことをゆかいに
そしてゆかいなことはあくまでゆかいに
私の尊敬する作家、井上ひさしさんの言葉です。自分にしかわからない個人的な体験や感覚を誰にでもわかるように表現しようとした作家、井上さん。そこには物事の本質を捉える深い眼差しがありました。
簡単なことを難しく言う人はたくさんいます。しかし、難しことを誰にでもわかりやすく伝えるためには、様々な人生経験とその経験を通して深く感じたことを相手の心に届く「ことば」にして表現することのできる力が必要です。
これからの日本で、職場の後輩を育てていくためには、かつて自分が上司や先輩からされてきたような指導を繰り返しても結果が伴わず空しいだけでしょう。
「難しいことをいかに実感のこもった言葉で、目の前の相手に合わせたわかりやすい言葉で伝えることができるか」をテーマに、仕事に励んでいただきたいと思います。О実さんの今後に期待しています。