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VOL.147
2017. 5月10日

WAIWAIBOX

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「怒り」をプラスの方向に

イラスト

ビヨンドザボーダー(株)/メンタルヘルス講習会専任講師
社会福祉士・精神保健福祉士 安藤 亘



<安藤亘の1分間カウンセリング 29年5月>


Q.特別養護老人ホームに勤務しています。今の職場は職員を募集してもなかなか人が見つからず、日々、残業に追われています。施設のイベント等人手が必要な時は休日も出勤しますが、代休はとれません。
 夫は中小企業の中間管理職で働き盛り。家の事はほとんど私任せで、職場でも家庭でも“何で私ばっかり”と思う日々です。
(E子:41歳)


A.まず、少し大きな話になりますが、日本人の働き方についてお話しします。総務省統計局による推計値ですが、平成29年3月1日現在の日本の人口は1億2676万人。


 では、今から145年ほど前、明治初期の日本の人口はどれくらいだと思いますか。推計で3300万人。そのうち農業人口は3000万人。何と国民の9割以上が農家であったということです。


 つまり家族形態は大家族。祖父母(高齢者)も孫の世話や食事の支度等役割がありましたし、障がいがあってもできる仕事はありました。


 そして明治初期と現在とのちょうど真ん中に大きな戦争があり、日本はその後世界に類を見ない速さで人口が爆発的に増加しました。

 

 生活様式や食文化も欧米化・都市化が進み、家族の形も「核家族」へと移行、働き方も変わりました。戦前は「肉体労働」、戦後は「頭脳労働」、そして電算化が進み頭脳労働はパソコンが取って代わり、現代は「感情労働」の時代と言えるでしょう。つまり今の時代は上手に自分の気持ち(感情)と付き合うことが大切な時代ということです。

 

 そして人間の感情のうち不快な感情は「不安」と「怒り」。特に「怒り」の感情とは、注意深く付き合う必要があります。


 付き合い方を間違えて、我慢を重ねて怒りを溜め込み、積もり積もって大爆発すれば、結果、自分も相手もまる焦げで後悔することに。


 しかし「怒り」の感情は全てマイナスというわけではありません。悔しさをバネに、自分磨きのエネルギーにするのは良い付き合い方と言えるでしょう。また自分の大切にしたいものを踏みにじられたり、一生懸命やってきたのに周囲から“やってあたり前”になっていたりすれば、むしろ怒る方が自然で、健全と言えます。


 E子さんは、家庭でも職場でも良い人すぎて、そんなE子さんに周囲はすっかり甘えてしまっているのでは。


 自分の気持ちをきちんと相手に伝える勇気をもちましょう。普段あまり言わない人が、冷静に怒る。これはなかなか効果があります。


 職場では、今の状況を客観的に上司に伝え、どうしたらよいかを一緒に考えてもらいましょう。もちろん家庭でも、時間をつくって夫に働きかけを。


 その時、上手な伝え方のコツとしては「できるだけシンプルに」「相手を責めない」こと。上司も夫もずいぶん前のことを引き合いに出され感情的に攻められれば、自分を守るために攻撃に転ずるかもしれませんから。


 E子さんが変われば、職場の人間関係も、家庭の夫婦の関係性も変化せざるを得ません。まずは、「(何で)あなたは…」ではなく「私は…」と私を主語にして冷静に怒る、きちんと主張する。


 E子さんが「他者」と同じように「自分」の気持ちを大切にすることで、今よりもゆとりある生活は実現できます。E子さんの一歩踏み出す勇気を応援しています。



ソウェルクラブ秋田事務局

広報「ひろがれソウェル秋田」 vol.147
発行日:2017年5月10日
発行:ソウェルクラブ秋田事務局
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