ひとりではなく、皆で
<安藤亘の1分間カウンセリング 28年9月>
Q.ある保育園で園長をしておりますW夫と言います。うちの園では、年齢も経験年数も異なる正規職員・非常勤・派遣と、立場の異なる職員同士が働いています。非常勤でも正規職員よりも気が利いて仕事のできる職員もいますし、正規職員でもなかなか育っていかない職員もいるため、職場の人間関係が微妙です。
職場の空気を良くするためには、どのようなことに気を付けたら良いでしょうか。
(W夫:48歳)
A.働きやすい職場環境をつくるためのポイントが3つあると言われています。
ひとつ目は「給与が右肩上がりにどんどん上がっていく」こと。しかし、バブルの頃はいさ知らず、福祉業界に限らず、今の日本ではそのような職場はむしろ珍しいでしょう。
ふたつ目は「成長欲求が満たされる」こと。職場の外でどんどん研修を受けて成長し、自分の下にもどんどん若手が就職してきて、自分の成長度合いが分かるということです。しかしながら、日々ギリギリの人員で何とか仕事を回しているところが多く、昔とは異なり、職場の職員は最近では研修に行くゆとりもなくなってきていますので、自己の成長度合いを図るにも限界があるでしょう。
3つ目は「承認欲求が満たされる」こと。認められる、ほめられる、これだけは職場で工夫すれば(時間もお金もかけずに)負担なく何とかなるかもしれません。この「ほめる」という点について、以下少し掘り下げてみましょう。
私が講師を務めた管理監督者向けメンタルヘルス講習会で「働きやすい環境づくり〜今できることからはじめよう〜」というテーマでグループワークをしていただいた時のこと。
ある社会福祉法人の若手ホープ(Fさん)が、お話しして下さった内容です。
Fさんは自らの施設での実践の様子を以下のように紹介して下さいました。「“ヒヤリハット”では職員(職場)は元気にならないんですよ。うちは“キラリグッド”。キラリと光るような場面やグッドな場面を見逃さず、意識して気付いた時にその場で職員同士がお互いに指摘してほめるんです。半年したころから徐々に職場に浸透し、1年経つ頃には職場全体の雰囲気や特に若い人の表情が変わってきました。」と。
家庭や職場といった身近な人間関係では、相手の本意を確認する前に、感情的に反応しやすいもの。相手のあら捜しをするのではなく、良いところを見つける習慣が職場(組織)の中に文化として形成されるわけですから日常業務にも良い影響を及ぼします。
そして何より大切なのが「働きやすい職場にするための工夫」は園長がひとりで悩み考えて実現するものではないということです。園全体の「共通の課題」としてじっくり考え、そして皆で決まった取り組みは、習慣化し定着するまでじっくり継続していくことがポイントです。
「改善はボトムアップ、改革はトップダウン」という言葉があります。あきらめず、長期的に良い環境を整えるために職場全員が問題意識を共有し、膝を突き合わせ検討する場を設けることが第一歩です。
職場全体で取り組めることを整理し、職場全体の課題として、現場で「今できること」から始めてみませんか。