「…つもり」と「思いやる」/がんばってきた自分
<安藤亘の1分間カウンセリング 28年6月>
Q.2年前に今の福祉施設に転職してきました。転職前も後も仕事も家庭もそれなりに大事にして頑張ってきたつもりです。しかし最近仕事に慣れてきたせいか、今の職場の人間関係が見えてきて巻き込まれ、悩むことが多くなってきました。職場でよく「普通こうだよね」とか自分の正当性や基準を相手に押し付ける人が目につくようになりました。
「思いやり」の気持ちを大切にしながら日々過ごしたいのですが現実的には、なかなか難しいです。職場で相互に「思いやる」環境を整えるにはどうしたら良いでしょうか。
(T子:40歳)
A.まずは、毎日本当にお疲れ様です。
T子さんは相互に「思いやる」環境を整えたいとおっしゃいます。職場や家庭で大切とされるのが「思いやり」ですね。
そして誰しも大事だとわかっていても、なかなか実現しないのが思いやりのある環境でしょう。いったい思いやりのある環境にするためには、具体的にどんなことに気をつければ良いでしょうか。
まず「思いやり」って何でしょうかね。やさしく接することでしょうか。何でもかんでも許してあげる事でしょうか。
何となくわかっている「つもり」になっている抽象的な言葉は、具体的に言い換えないと現実場面では応用・活用しにくいものです。
「思いやり」という言葉は、そもそも「思いやる」(相手の立場に思いを向ける、相手の立場に立って考える)というところからきています。
普段人は(私も含めて)自分の視点で考え行動しています。それが自然なことですね。でも、自分が正しければ相手が間違えているのかと言えば、そうでないことも多くあります。相手の立場に立って考えてみるとあながち間違いではないということが。
つまり「思いやり」とは自分の見方と異なる視点や角度から物事を捉える(見たり考えたりする)ことができるということで、自然にできることではありません。
私も含めて元々「思いやり深い」人はいません。「思いやり」は、少し立ち止まって目の前の相手の立場に立って考えようとする心の働きで、自然にできるものではなく「意図的に」「意識して」行わないとできない行為なのです。
T子さんはこれまで自分に厳しく頑張ってきましたね。ここで少し視点を変えて、これまで頑張ってきた自分を認めて「自分なりに良く頑張ってきた」とほめてみて下さい。すると少し気持ちも緩み、相手の立場に立って考えてみようとする心の「ゆとり」が生まれてきます。
それが結局は「思いやり」の一番の近道かもしれませんよ。